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「そうだね。才能があって口の堅いデザイナーを探すしかないね・・・。
ところで、今まで、なんで社長の関係が十階で、重役の関係が七階だったんだべ?
八階と九階に多目的フロアと大ホールがあるのは不自然だべ?
多目的フロアと大ホールは一階と二階にあるほうが警備上は安全だろうに・・・」
以前からタエは、十階にある社長室が気になっている。
ケイは、タエの言う事をもっともだ、と思った。
「それなら、役職上、上だと思われてるヤツラが一階で、社長の関係が二階ださ」
「それ、あたしたちの事を考えてる?」とタエ。
「うん。役職上の上のヤツラが上の階にいる必要はねえべ。下の階にいて、もっと働いて欲しいんさ。アアッ!重役をクビにしたんを忘れてた!」
ケイは自分の頭を拳でコツンと叩いた。
「ああ、それと、『三洋テキスタイル』を調べたよ。
うちのメンズ部門が三洋テキスタイルと取り引きがあるよ・・・」
「あの彼の事、調べたて何かわかったん?」
ケイのことだ。前橋の渋川寄りの出身という情報だけで、三洋テキスタイルの社員を調べてるはずだ。
「前橋出身で三洋テキスタイル勤務の三十代前後、身長百八十くらい。その他不明。
それだけの条件で人捜しは、やっぱ、難しいべ・・・。
いっそのこと、三洋テキスタイルの受付で事情を話して、傘を渡してきたらどうなん?
その方が早いベ」
「うん。だけど、また、彼と話をしてみたいなあ~」
「アアッ、タエのその言い方、その人にお熱だべ!
マア、ヤスオの事があったんだから、気をつけるんだよ。
もし、また雨傘の彼に会う機会があったら、あたしも同席させな!」
「うん、いいよ。
さて、今日の議題は、レディース事業部の人事と、レディースアウターウエアのデザイン企画だよ。
レディースアウターウエアデザイン企画室長がいねえから、大変だべ」とタエ。
「タエはデザイン企画に戻りたいんだべ?」
「うん。だけど、言い出しっぺだからね。社長は・・・」
二人が実家の方言で話しているうちに、エレベーターが十階に着いた。
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