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三 会議
午前十時。
「今日の議題は、レディース事業部の人事です。
私たちは今回の人事を、人事部長に一任したい。
みんなの意見を聞かせて欲しい・・・」
タエとケイは、十階の社長専会議室の丸テーブルに着いた部長たちを睨みつけた。空手三段以上の二人だ。睨みを効かせるのは慣れている。
「・・・」
会議出席者から発言はない。
「異論なければ、人事部長は他の部長たちと協議して、レディース事業部長と、レディースアウターウエアデザイン企画室長を決めてください。
第一デザインルームチーフデザイナーは生方京子に決定です」とタエ。
「しかし、社長。従来は・・・」
統括営業部長がふんぞり返って舌打ちするようにそう言いかけた。
「なんですか?」
ケイが統括営業部長を睨みつけた。
「従来は・・・」
「その従来どおりが、前社長によるデザインデータ流出と、会社乗っ取りを招いたんだろう。違うか?」とケイ。
「そうですが・・・」
「先ほど『みんなの意見を聞かせて欲しい』と話した時、なぜ、何も言わなかったんだ?」
タエが統括営業部長を睨んだ。
「はい・・・。思いつかなかった・・・」
「私たちが女で若いと思って舐めているのかっ!
同じ事を何度も言わせるなっ!」
ケイが統括営業部長を怒鳴りつけた。
「しかし、大沢さん・・・。いや、社長」
「もういい。統括営業部長は、私たちが社長を務める事に不満らしいな。
不満なら、いつでもこの会社から出ていってくれ」
ケイはおちついてそう言った。
「何も、そんな・・・。
フン。マア、いいだろう。辞めてやるよ」
統括営業部長の態度が急変した。街中で良く見るヤクザの雰囲気だ。
「みんな、こいつを捕まえろ!産業スパイだ!
経理部長!警備部長を呼べ!」
タエの指示で部長たちが統括営業部長を取り押さえた。
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