第一章 女子高生が歩けば御曹司を助ける、不本意ながら

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夜の八時過ぎ塾を終え、一人で家に向かう。 高校二年になり四月も半ば、肌寒さと暖かい日が代わる代わるやってきている。 近づいてきたゴールデンウィークは人混みで死なない程度に満喫したい。 そんな事を考えながら、いつもは通らないルートを歩いていた。 あまり遅い時間に公園を歩くものではないが、気分転換に夜景を見て帰ろうと見晴台に向かえば人影が一つ。 あそこの下は崖になっていて、落ちれば危ない場所だ。 その柵から、人影が身を乗り出したのが見えた。 『自殺?!』 反射的に走り、持っていた鞄が落ちて中身が転がり出た事など気付かぬまま、その人の背中から両手で抱きしめるように掴む。 「早まっちゃ駄目です!!」 「は?!」 「生きてたら良いことだってありますから!」 「引っ張るな!」 「駄目です!」
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