5人が本棚に入れています
本棚に追加
「梅雨」×「夏日」
6月の梅雨の真っ只中、お金が無い僕は六畳一間の部屋でテレビを視ていた。
すると天井から雨漏りが始まった。
雨水が壁を伝わり、畳を湿らす。
とうとう押し入れの中に避難した。
携帯ラジオを聴きながら過ごす。
隣に誰か居た。
長い髪の若い女だ。
「誰だ?」
女と目が合った。
可愛い顔をしていたが二十歳ぐらいに見えた。
こんな押し入れに女が居るはずは無い。
「幽霊か?」
女は頷く。
不思議に怖くはなかった。
「しばらく、ここに居させてくださいな」
あ、構わないよ。
「その代わりに、話し相手になってくれないか」
はい
女は話し始めた。
「この場所は、昔に土石流で全滅したのです」
「知らなかった」
「私は、アメリカ留学を明日に控えて、夜は眠れなかったのですが、その夜に土石流に襲われて死にました」
「可哀想に」
俺には夢も金も無いけど、夢に向かう前に亡くなるなんて可哀想に。
その時に山の方から凄まじい大音響が聞こえて来た。
「まさか土石流?」
そうです、来ましたね。
俺は押し入れから出て外に出ようとした。
しかし
女が足に抱きついて来た。
「何をする、俺を殺す気か」
女は手を離さない。
玄関まで女を引き連り這った。
バリバリと凄い音がして押し入れが土石流で破壊された。
俺は必死で女を引き連り外に出た。
振り返るとアパートは破壊されていた。
ちっ
女は手を離して消えた。
翌日は晴れた暑い夏日になった。
俺は助かった。
これからは夢を持ち生きようと決めた。
最初のコメントを投稿しよう!