「推し」×「みたらし団子」×「省エネ」

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「推し」×「みたらし団子」×「省エネ」

俺の推しはガールズグループのミユちゃんだ。 毎月小さな劇場で公演がある。 いつも劇場裏から最後に出てくる。 この日も裏口でミユちゃんを待っていた。 他にも10人くらいのフアンの男が居た。 みんなプレゼントを持っている。 俺はミユちゃんが大好きな京都のみたらし団子のお菓子を買ってきた、きっと喜んでもらえると信じている。 みたらし団子の箱の中に、呪いの指輪を入れた。 ネット通販で買ったのだが、3ヶ月肌身話さずに持っていた。 俺のオーラが指輪に移り、ミユちゃんが指輪をはめたら俺の虜になるらしい。 箱には住所、名前を書いた紙や写真も入れた。 やがてミユちゃんが出てきた。 いつもの可憐な姿だ。 みんながプレゼントを渡して、俺のプレゼントも受け取ってくれた。 ワクワクしながら帰宅した。 深夜の一時に誰かがドアを叩く。 誰だろう、真夜中に? ドアを開けると、何とミユちゃんが立っていた。 「ミユちゃん」 「私は、あなたの奴隷です」 「えっ?」 ミユちゃんの薬指には、呪いの指輪が嵌められていた。 やったぜ。 その日から同棲が始まった。 しかし ミユは、昼まで寝ているし、料理もやらないし、掃除もやらない。 「奴隷なら買い物くらい行けよ」 「いゃよ」 何が奴隷だ 無理矢理に外に連れ出して指輪を外して道に捨てた。 ミユは、しばらくボッとしていたが何処かに去った。 あっそうだ。 省エネの冷蔵庫を買おうと思っていたんだ。 すると知らない若い女が立っていた。 こちらに寄ってきた。 「手相を見てあげましょう、手を出してくださいな」 俺は無意識に左手を差し出した。 女は素早い動きで俺の薬指に指輪を嵌めた。 俺が勝手に話し出した。 「ご主人様、何でもご命令を」 「はい、はい、じゃあ洗濯と買い物をお願いね、生活費に10万円ちょうだい」 しまった、自分には指輪を外せない。 これから俺は、この女の奴隷になるのか。 ため息が出た。
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