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駐輪場の入口に着いた時点で、左はじのほうに相川がいることには気がついていた。
ちっ……ニアミスか。かちあう前に出ようと思ってたんだけど。
さりげなく目をこらすと、横にあるのは見覚えのある田島のチャリで、おおかた田島に乗せて送ってもらうのだろう。
幸い桜井は気付いてないようなので、俺は軽快さを心掛けながら桜井に話し掛け続ける。
「お好み焼きとラーメンどっちがいい?」
「え、どっちでも」
「じゃあ俺はー」
かしゃんと音がした。
桜井が、振り返ってしまう。
あーあ
その瞬間、桜井の表情が、かすかに、でもたしかに強張るのを、なす術もないままで見送っていた。
——ほらみろ田島。おまえがさっさと覚悟を決めないから
——誰も彼も傷だらけじゃないか
こころのなかで悪態をつきながら、でも誰も彼もって誰だ?と反射的に分析する。
俺か?まさかな。
俺は今、傷ついてなんかないだろう?
自問してみたけど、実際のところよくわからなかった。
桜井が好きなのかどうかなんて、やっぱり俺にはわからないよ。
ただ、無駄に傷ついたりはしないとのいいに。
それは個人的な思慕なのか部活仲間に対する一般的友愛なのか。
だれか俺の代わりに、きっぱり決め付けてはくれないだろうか?
そのほうがよっぽど、信用に値する気がするのに。
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