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「俺ってそんなに痛々しいかね」 「まあね、てか、人に優しくありたいなら、もう少し長い視点で考えろ。このままじゃ誰も彼も傷だらけだろ。見てるしかない桜井の身にもなれって」 狩野はいつだって冷静で、しかも平等に他人に優しい。いつもそんな調子で疲れないのかと聞きたいけれど、なんとなく聞けないままで甘えている。 聞いてしまったら、何かが変わってしまう気がするのは気のせいだろうか? 「相川だってなぁ。まだきっと、安心しきってるだけだろう?お前、ずっと見守ってきたんだろう?今更なんの遠慮だよ。がーっと押して押して落としてくるか、それが無理ならさっさと他に彼女でも作れ」 爽やかな外見とは掛け離れた乱暴なことをいって、それでも狩野は爽やかに笑った。 ほんとは誰が好きなんだろうなと思ったけれど、俺はやっぱり気付かないふりをした。 たじまー、とまた遠くで相川の声がして、狩野がそちらをちらりと見やる。 「まぁせいぜい頑張れよ 。今日は失恋話をきくので精一杯かもしれんけど」 俺は帰る、と、狩野が立ち上がるのを、ぼんやりと見上げていた。 「なぁ。俺って、偽善者かな?」 「何だ?突然」 狩野が面食らったように動きを止める。 「さっき桜井に言われたんだよなー。偽善者って。それで俺、ああそうか、俺って偽善者だったんだ、と、思ってさ」 狩野が、呆れたように困ったように渋々と笑う。 「それはー、桜井もまた思い切ったことを」
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