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7
夕焼けの町は、いつもの通りに鮮やかで優しかった。
俺は、この沈み行くような時間が好きだった。
赤くて、眩しくて、一瞬で。
幻みたいにすぐに消えていく。
相川を自転車の後ろに乗せて帰るのことには慣れている。俺たちは小学校も中学校も同じで、だから家も近くて、相川がバスで登校した日には、ついでだからと乗せて帰る。
それはよくある光景で、慣れた日常のひとコマで、別に、特別な意味なんかないはずなのに。
両肩にかかる微かな重みが、その手の、感覚が。今日に限って妙に生々しくて、どうしたらいいか分からなくなる。
相川の何が変わったのかな、と、思ったけれど。
違う。
変わったのは、俺だ。
—— 狩野が余計なことを吹き込むからだ……
どうせなら、百戦錬磨の口説き文句なんか教えてくれたほうが良かったのに……
駆け出しそうな鼓動を押しとどめるように、俺はゆっくりと深呼吸する。
肩につかまる相川に気付かれないように、そっと。
「私さぁ、また振られたわ」
「うん」
「もう何度目だっけ」
「さぁ」
「なんか、振られてばっかよね」
「だな」
なんでかなぁ……?私、なんかだめなのかなぁ?と、呟いた言葉は、平静を装っていたけどうまく取り繕えていなくって、なんだか痛々しく響いた。けれど、俺はそれにも気付かないふりをしてしてやった。
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