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2 Fin
彼女は前の籠に荷物を積んで、でも自転車の横に佇んでいた。
—— 待ち合わせ、か。……田島君と
どうせいつだって彼の行動は私とはまるで関係がないのだ。いつだって。
この人のためなのだから。
—— 田島君のこと、好きでもなんでもないくせに
—— なんで独り占めなんかするのよ
そう思ったところで、不意打ちのように肩を叩かれた。びっくりした。
思考が暴走しそうになってたことには、そのときようやく気付いた。
「俺は今日はお好み焼きの気分なんですけど」
見上げた狩野君は、いつもみたいに笑っていた。
そつなく、感じよく、はかったように同じだけ。
「うん。いいよ。行こう」
「じゃあ、ついてきて」
そう言ってまた少し目を細めて、狩野君は滑らかに走りだす。
狩野君と、二人で帰ったことなんかないなぁと思いながら、慌ててその背中を追いかけた。
駐輪場から校門を抜けて住宅地から商店街に入る。歩道もない狭い道。
さっきまであんなに饒舌だったのに、狩野君はずっと黙ったままだった。振り返りもしない。けれど抑制の効いたスピードは速すぎも遅すぎもしなくてたぶん、私に合わせてくれていた。
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