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変わらない距離で、右斜め前にある狩野君の背中。
すぐ右横をスピードを上げた車が追い抜いていって、初めて狩野君がちょっとだけ振り向いた。
危なくないよう庇われていたということに、そのときやっと気が付いた。それから、さっきからの一連の言動も全て。
ずっと、必要以上に傷つくことのないように、庇っていてくれたんだと気が付いた。
この人は優しいんだ。なんだか油断ならないけど、何考えてんだかわからないけど。
でも優しいんだ。すごく。
前を行く背中は無言のままで、まっすぐ風を切ってどんどん行ってしまうけど。
とりあえず今は、ついて行こう。
狩野君が向けてくれたさりげない優しさに、応えなければ。
せめて。
止まることなく。
振り返ることなく。
夕焼けに染まる道を駅の方に向けて走る。すっかり下校が遅くなったせいで、見知った顔はさっぱりいなかった。遅れないように狩野君の後を追う。
狩野君は、振り向かない。
どこまで行くとかどんな店だとかも、まるで説明してはくれないけれど。
この人がつれてってくれるお好み焼きは、きっと美味しいのだろうな、と。
なんとなく、平かな気持ちで考えていた。
side桜井 Fin
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