16人が本棚に入れています
本棚に追加
「やっぱりそうかな」
彼女が瞬きを繰り返す。
「やっぱ俺、偽善者かな」
むっとしたように、瞬きをとめてじっと見返してくる。
「そうだよ」
「だよな。俺もそうなんじゃないかと思ってた」
「なんだ、自覚あったの?」
「まぁそれなりに。でも、バレるとは思わなかったな」
「凄い自信」
「そうかな。桜井は、頭がいいね」
「なに?いきなり」
「よく分かったね。どうして分かった?」
強気な態度はかろうじてそのままに、彼女が言葉を失う。
「桜井は俺のこと、よく知ってんだね」
追い討ちをかけて追い詰める。
「俺のこと気になる?」
顔が赤くなるよりも先に唇が小さく震え、思い出したようにふっとのけぞる。
そして、今度こそ立ち止まることなく逃げていってしまうのを、呼び止めもせずに見送った。
—— これじゃあ偽善者どころじゃないな
ただの悪者だ、完璧に
分かっただろう?桜井
だからもう、俺なんか見るな
お前はずっと、綺麗なままで
綺麗なものだけ見ていればいいんだ
最初のコメントを投稿しよう!