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「桜井になんやかんや様々しろってか」
「だから狩野、それ下世話だってば」
「だいたい槙野と比べんな。あいつは何ていうかー……ちょっと天然記念物だよ」
控えめに笑う。俺も狩野も、なんだかどうしようもない事が分かっている。
「実を言うとね、俺、桜井よりも相川のほうが好みだぞ」
狩野が意外なことを言うので少し驚いた。
驚いたけど、それでもいいか、と、思った。だって狩野はすごく、いい奴だから。
「じゃぁ、相川と付き合ってよ」
何だそれ。
狩野がかなり呆れた顔をする。何度か瞬くを繰り返して真意を確かめようとする。
「お前、相当、参ってんだなぁ」
その通り。
俺は相当参っている。
いまにもふつりと切れてしまいそうなほど、磨り減っている。
だけど、俺がだめになったらきっと。
簡単に誰かを、傷付けてしまうから。
まだだめだ。もう少し。
せめて、卒業まであと1年ちょっと。
そのあとの事は知らない。
その頃、俺がどんな選択をするのか、さっぱり見当がつかない。
けれどたぶん、俺は結構、ひどいことを淡々と出来るタイプなんじゃないか、と思う。
その想像が妙にリアルで、俺は消えたくなるほど暗澹とした気分になる。
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