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「ほう。達観してるなあ」  雅美は能弘のことを考えた。結果的に雅美が能弘に異常性を気づかせてしまった。  雅美は今でも能弘の笑顔を思い出す。能弘に絵を諦めないでと諭されてから、征にバレないように描いている。  能弘本人も苦しんでいたのではないか。雅美がもう少し、彼に寄り添えればと、今はとても悔やまれた。わたしは愛する人を失った。    小鳥遊は交通課に異動願いを出し、その希望が受け入れられ、現在、ミニパトに乗って駐車違反の車両を取り締まっている。  パトカーに乗ろうとしたとき、電柱の陰から誰かが小鳥遊を見ていることに気づいた。その視線と目が合った。観念したのか、電柱の陰から男が姿を現した。  逸郎だった。逸郎、どうしてここに?  結局、逸郎の罪を見逃してしまった。小鳥遊はその瞬間、悟った。ここにいるべきではないと。だから、異動したのだ。  突然、無線が入った。無線に気を取られている間に、逸郎は消えていた。
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