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“そんなんやから余計甘えるんやん”
年中児になった貫太を今だ赤ちゃん扱いする父に白い目を向けながら、髪を乾かしにお風呂場に戻ろうとすると、
「父ちゃんと一緒に寝よな、ほらいこ」
と手を差し出した父から離れて、貫太が眠そうな足取りでちょこちょこと私の方へ歩いてくる。そして、私のパジャマの裾をキュッと握って
「ねぇね、“とんとん”して……」
と呟いた。
「……うん、“とんとん”する。かんちゃん、おいで」
“さっきは“くちょばばあ!”言うてたやん”と思いながらも、そんなことにはもう腹もたたない。結局……両親と同じように私も、この手のかかりすぎる弟が可愛くて仕方ないのだ。
両親の大きなベッドの真ん中で貫太を“とんとん”し始めると、すぐに小さな寝息が聴こえてくる。上下するポッコリしたお腹に手を当てながらアザラシみたいな寝顔に癒されていると、眠気と一緒に今日の委員会での出来事が頭に浮かんできた。
“明日も、三津谷くんと話せるかな……”
“話せたらいいな……”
夢みたいだった三津谷くんとの時間を思い出しながら私は、明日からの学校生活に期待を膨らませて目をつむった。
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