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登校前の静かな校内にボールの弾む音が聴こえてくる。一定のリズムを刻んでいたボール音は少しずつリズムを変えて、軽快なドリブルの音に切り替わった。
「毎日何時に朝練来てんねやろ」
練習着に着替えながら隣でこころが呟く。
「んー…、“めっちゃ早く”ちゃう?」
「朝練していいのは7時からやろ。だから7時に来てるとして……、家何時に出んの?」
「さぁ……」
「“さぁ”って、栞奈と同じくらい家遠いやろ。ってことは30分チャリこぐとして6時半には家出なあかんやん。やば、早すぎひん?一体何時に起きてんの?」
「…知らんやん、私らも早よ行こ」
自分も朝練に来ているのに、朝練常連の存在に関心が止まらないこころを促して、体育館に向かう。呼吸を整えて
「「おはようございます、お願いします!」」
と二人で揃えた挨拶が体育館中に響いても、ドリブルの音は少しもブレることはなかった。
「な、いっつも思うけど普通挨拶くらい返さん?別に体育館に入る挨拶しただけであっちに向かって言った訳じゃないけどさ」
「こころ…もーいいやん」
「だって、せっかく同じクラスになったのに愛想無さすぎじゃない?ほんまに気ぃ付いてないんかな。私、真ん前まで行って“おはよ!”言うてこよかな」
「あかんって…」
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