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耳を澄ませていつも探していた声が間近で、しかも私に向かって聴こえてくることに心臓が“ギュン!”となる。
遠くから探していた眩しい仕草や表情も距離が近すぎるから直視できない。
“初めて、三津谷くんに話しかけられた…っ”
“めっちゃ近い…っ。三津谷くんがこっち見てるっ!”
何日も前から心の準備をしていたはずなのに、本物の“三津谷 輝くん”に話しかけられた衝撃で私は、目も合わせられず小さく返事を返すことしかできなかった。
二年のクラス替えで、なんと三津谷くんと同じクラスになった。“もう少し近づきたい”と思っていたことと、実際に距離が近づいて探さなくても毎日当たり前に三津谷くんの姿や声が届くようになったこととは全く違って。自分から話しかけようと思うどころか、三津谷くんの存在を近くに感じて動揺しまくっている心を、周りに悟られないように平常を装うことで精一杯だった。
ましてや、立候補した美化委員会の男子の枠がなかなか決まらない微妙な空気の中、三津谷くんが真っ直ぐに手を上げて
「俺でいいなら、やります」
と隣のクラスまで聴こえるくらいはっきり言った時は、心臓が口から飛び出すんじゃないかと思った。しかも皆から
「声、でか」
とイジられた三津谷くんが、困ったように頭をかいたから……。一気に和んだ雰囲気の中、私だけが可愛いすぎる仕草に悶えすぎて死にそうだった。
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