十九、勝負の夜

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 そう言うと、殿はわたしの向きをかえさせて、向かいあった。膝をそろえ、横座りのような態勢である。 「……やっぱりお膝に乗るのですか?」 「そうすると近いだろう」  殿は正面からわたしを見て、頬を撫で、真剣な表情で言った。 「今日こそしたい。よいな?」 「……え……」    是とも否とも言わぬ間に唇を塞がれ、殿の舌が入ってくる。 「ん……」  舌を絡めとられ、唾液を吸われる。恥ずかしくて殿の顔を見ることができない。 「ふ……んん、や、やっぱり、いや」  大きく首を振って殿を拒絶し、そっぽを向く。 「……於寧(おしず)……俺が、嫌いか?」 「嫌いな、わけでは……でも……恥ずかしい」  顔を見るのが恥ずかしいので、わたしはいつものように、膝の上で背中を向けた。 「やっぱり、いつもの通りでお願いします。……お顔を見られるのも、見るのも恥ずかしい」 「……顔を見なければいいのか?」 「顔を見なければできないのですか?」 「いや、そうではない」 「ならば、このままで」 「そうか……於寧がこれがよいと申すならば」
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