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そう言うと、殿はわたしの向きをかえさせて、向かいあった。膝をそろえ、横座りのような態勢である。
「……やっぱりお膝に乗るのですか?」
「そうすると近いだろう」
殿は正面からわたしを見て、頬を撫で、真剣な表情で言った。
「今日こそしたい。よいな?」
「……え……」
是とも否とも言わぬ間に唇を塞がれ、殿の舌が入ってくる。
「ん……」
舌を絡めとられ、唾液を吸われる。恥ずかしくて殿の顔を見ることができない。
「ふ……んん、や、やっぱり、いや」
大きく首を振って殿を拒絶し、そっぽを向く。
「……於寧……俺が、嫌いか?」
「嫌いな、わけでは……でも……恥ずかしい」
顔を見るのが恥ずかしいので、わたしはいつものように、膝の上で背中を向けた。
「やっぱり、いつもの通りでお願いします。……お顔を見られるのも、見るのも恥ずかしい」
「……顔を見なければいいのか?」
「顔を見なければできないのですか?」
「いや、そうではない」
「ならば、このままで」
「そうか……於寧がこれがよいと申すならば」
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