美里町ホームカミング 2

2/6
前へ
/162ページ
次へ
 私は心配しなかった。だって、お兄ちゃんが連絡をくれないのはいつものことだから。でもお父さんとお母さんは違った。その日から毎日お兄ちゃんの携帯電話に連絡を入れた。私を連れて東京まで行って、劇団の人と会ったりもした。それから私は学校を休んで、お父さんとお母さんといろんな所に行った。親戚の家とか、何度か家族旅行で行った場所とか、お兄ちゃんの友達がいる所とか、お兄ちゃんがいそうな所は全部行った。それでも手掛かりはひとつもなかった。  お母さんはだんだん元気がなくなってきた。布団で寝っ転がる時間が増えてきて、家事が手につかなくなった。お父さんが病院に連れて行ったら、鬱病だと診断された。私たちは今までのような、どこにでもいる普通の家族ではなくなってしまったのだと、そこでようやく気が付いた。
/162ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加