美里町ホームカミング 1

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「会えたらね」と私は無難に返しておいた。もし会えたとしても、サインをもらう気にはならないけれど。  スクールバスが仙台駅に着いた。駅前のショッピングモールを見て回るのに誘われたけれど、電車がそろそろ来るからと断った。次に会うのはゴールデンウィーク明けだね、またね、と彼女は言ってショッピングモールに入って行った。何だかキラキラして見えた。私はあんな感じの女の子にはなれないな、とつくづく思う。  東北本線の下り電車に乗り換える。あと50分でようやく私の住んでいる町に帰れる。家から遠い高校だけど、町内の学校には通いたくなかった。うちの家族は、悪い意味でちょっと有名になってしまったから。それを察してか、私が今の高校に入学したいと話しても、お父さんは反対しなかった。仙台の、それも市街地から離れた私立高校。私を知っている生徒は、多分一人もいない。  50分間なんか、うとうとしていればあっという間だ。自宅の最寄り駅を降りると、仙台の賑やかさが夢だったかのように思えてくる。
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