美里町ホームカミング 2

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美里町ホームカミング 2

 お兄ちゃんは、私と10歳差の、どこにでもいる普通の見た目をした男の人だ。お兄ちゃんってどんな人?と友達に尋ねられると困るぐらい、中肉中背の、普通の人。性格はちょっと変だけど。  お兄ちゃんが東京でひとり暮らしを始めたのは、高校を卒業して専門学校に入学する頃で、私は小学生だった。元々まめな性格ではないお兄ちゃんは、お父さんにもお母さんにもほとんど連絡をよこさなかった。それでもお盆と正月にはふらりと実家に帰って来た。  専門学校を卒業したお兄ちゃんは都内の小さな劇団に入った。その頃はお兄ちゃんからそう聞いただけで、本当かどうかよくわからなかったけど。でも、たまに会った時に見るお兄ちゃんの表情は生き生きしていて、私たちは「まあ楽しく元気にやっているならいいか」と思っていた。  私が中学校に入学してすぐの頃だったと思う。お兄ちゃんのいる劇団の団長と名乗る人から、うちに電話が来た。お兄ちゃんと1週間ほど前から連絡が取れないと言う。
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