昨夜の○○公園

1/1
前へ
/3ページ
次へ

昨夜の○○公園

真っ暗な公園に、悲鳴と真っ赤な炎が弾ける。アルネブは顎を撫でながら、にこにこと笑って、その様子を眺めていた。興奮が抑えられず、じっと立っていられない。 アルネブは復讐専門業。依頼があればだれでも始末するが、こだわりがあり、人の背中から生きながら燃やす、という方法しかとらない。隣には王様のような金の椅子に座っている同業者のカノープスがいる。彼は自らの両足を切り落としたという経験を持つほど、スリリングな人生を送って来ている。歩けないカノープスに来た依頼を、今日はアルネブが請けた。 まさかバスの中で標的に出会えるとは思っていなかったが。追う手間が省けて良かった。公園も傍にあったので、運が味方についた。アルネブは、必ず仕事をする前に服を着替える。兎の尾が着いた燕尾服と、兎の耳が着いた帽子。最初に標的と会った時の姿は、ただの白い薄手のセーターだったから。 燃え盛る彼女の隣には、ベビーカー。中には小さい赤ん坊がいる。 「うるせぇな、泣くな」 カノープスが怒ると、余計に赤ん坊が泣き出してしまった。 「もう放っておきましょう。親がいなくなったのですから、放っておけば勝手に息絶えます」 「始末しないのか?」 「赤ん坊は燃やしても踊りませんから」 カノープスは鼻で笑い、なるほどな、と言った。 もう動かなくなった標的の彼女を、先までの興奮とは裏腹に、冷めた目で見下ろした。炭と化した人間は炭より使えない、ただのゴミだ。何せ、アルネブは人が燃える様をバレリーナのように感じ、昂るからこそ、この仕事をしているのだから。 「彼女はずっと眠りたい眠りたいと言っていたそうです」 アルネブは標的だった女を見下ろして微笑み、その耳元で呟いた。 「願いが叶って何よりですね」
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加