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祈り
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湿った風がメイサの銀色の髪をなびかせる。
僅かな気候の変化を感じながら彼女は祈り続けた。
絶壁の山の中腹を抉り取った様な溝に建てられた祠がある。
一生の大半をこの祠で過ごさねばならない。
彼女の宿命である。
遥か彼方には水の都セレーヌへと流れる
ロネ運河が見える。
セレーヌの水源であるロネ運河の河幅拡大工事は
数年掛かりの大事業であった。
干ばつに苦しむこの国がアクア・ラルタを開催する
為に必要不可欠な治水工事である。
その為に働き手の男達の死傷者は数知れず…
メイサの暮らす貧しい村からも駆り出され
犠牲になる者もいた。
亡くなった者を想い彼女の涙が乾いた山肌に
落ちるのと同時に天空からも雫が滴り落ちた。
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