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願い
■
豪雨は夕暮れのオレンジ色の空をまるで
霧が掛かったように先を見えなくした。
仰向けに寝そべったタケルは大口を開けて
乾いた喉を潤しながら安堵の表情を浮かべた。
「ねぇ…これで良かったの?
本当にお母さんと離れて暮らすの?」
不安そうに言うリナの髪をタケルが撫でる。
銀色がかった髪は母親に良く似ていた。
「お母さんと同じ巫女の血を引くお前は
干ばつに悩むこの国の祈祷師として一生を終える
のではなく外の世界を見せてやりたい。
それがお父さんとお母さんの願いだ。
現在の決断が正しいかどうかは誰にも
分からない…でも次の世代の未来に
繋がる事を信じている」
干ばつで苦しむ国難の中開催する決定が
下されたアクア・ラルタもきっと…
見上げた夕空セレーヌの町には虹が掛かっていた。
この町でタケルとリナの新しい人生が始まる。
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