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11話 脱出
俺が牢屋に入れられてからどれくらい経っただろうか。
牢屋に入れられているが故に、今はいつかもわからない。
牢屋でやる事なんて何もなく、ただ寝て食べてを繰り返しているだけ。
そんな毎日に飽き飽きして、もう脱走してしまおうかと考えていた矢先、それは起こった。
「朝霧、面会だ。」
乙葉がそう言って牢屋に入ってきた。
「面会……?」
俺は疑問に思った。
「ここには面会なんてものがあるのか?」
俺がそう問うと、
「ついさっき、1人の男から面会の申し出があってな。どうやってお前の居場所を突き止めたのかはわからんけど……」
「まぁ、司様も面会を認めているから、こうやって呼びに来たわけだ。」
なぜ久賀は面会を認めているのか……
俺はふと疑問に思ったが、考えても意味ないと思い、俺は考えるのをやめる。
「わかった、行こう。」
俺がそう言うと、乙葉は手錠を出して、俺に着けた。
「まだ一応敵だからな。これは許してくれ。」
「わかってるよ。」
とりあえず、その男と会ってみることにした。
果たしてどんな男が俺に会いたがっているのだろうか。
その事実を、俺は知る由もなかった……。
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ドラマでよく見るような面接室につくと、そこにはよく見知った顔が現れる。
その顔を見て、俺は思わず目を見開いた。
「琉生!!」
見ると、透明なガラス板の向こう側に琉生いたのだ。
俺は席に座らせられる。
「今から約30分程時間を与える。時間をいっぱいいっぱい使っても良いし、早めに終わらせるのも勿論良い。」
乙葉と共についてきていた男達の1人がそんな事を言う。
……そうして面会は始まる。
「なぁ琉生、今まで何処にいたんだ。京香は何処にいるんだ?琉生と一緒にいるのか?」
俺が慌ただしくそう問い質した。
そりゃそうだ。
こんなに心配したんだ。
俺は琉生や京香の現状が気になって仕方なかった。
「京香は無事なのか?」
「まぁ、落ち着けって。」
琉生が俺に静止を訴えかけるように手を出す。
「一馬が気になっている事が沢山ある事もわかる。だけど、今はちょっと待ってくれ。」
「なんで待たなくちゃいけないんだ。今は面会の時間なんだ。今話せばいいだろう。」
「今話せないのは、ちょっとした深い訳があるんだ。」
「何だよ、その深い訳ってのは。」
「それはだな……」
琉生がそう言ったその瞬間、琉生は後ろにいる2人の男のみぞおち目掛けて拳をふるった。
「ぐぁっ……!」
男達は呻きながらその場にうずくまる。
「な、何をしている!?」
そう言いながら、俺の後ろにいた男達が俺に寄って来るが、俺は能力を使い手錠を壊し、同じく男達のみぞおちに拳をふるった。
同じように呻きながら男達はうずくまる。
「本当に何やってるんだよ……」
俺は呆れながら琉生にそう言った。
「話は後だ、まずはここから出るぞ。」
琉生は俺にそう言った。
「わかった。」
そうして俺達は面接室を後にした。
面接室を出たところで、乙葉とすれ違った。
「な、何してるんだよ!?」
「なぁ、乙葉。」
俺は乙葉にそう声をかける。
「お前はどうしたい?」
「な、何がだよ。」
「俺は今からここから出る。もうここに戻ってくる事もないだろう。」
「リミットだ。乙葉の結論を今ここで示してもらう。」
「俺の誘いに乗るんだったら俺達と一緒に来てくれ。断るのであればここに残っててくれ。」
「ただ、ここから出たらもうお前は世界に楯突く事に、そして、久賀司の敵になる。」
「お前には、その勇気はあるか?」
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一馬はそう言い残すと、この場を後にした。
……正直、まだ迷っていた。
一馬について行った方がいいのか、それともここに残り続けて、司様のそばにいた方がいいのか。
司様に恩はある。
だが、それ以上に許せなかった。
俺の仲間達を傷つけて、殺した事を。
俺もヘマをしたらいずれ殺されるかも知れない。
司様は、俺を特別に見てはいない。
もう奴隷同然だ。
だったら、一馬について行くか……?
……俺は、司様のしている事が気に食わない。
司様を倒して、この世界を変えたら、あいつらのような犠牲者が少なくなってすむのかも知れない。
……だったら。
「すいません、司様。俺は、俺の信じたものを貫き通します。少しの間ではありましたが、今までありがとうございました……。」
俺はそう呟き、決意を固めて、一礼して、一馬についていくのだった……。
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