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2話 弱い
そして翌日の朝、俺は今日も自宅でコーヒーを楽しんでいた。
朝食はいつも菓子パンを食べているのだが、甘い菓子パンにはコーヒーがよく合う。
眠い目を擦りながらコーヒーで眠気を覚ます。
小さい頃はこの苦味を嫌っていたのだろうけど、今となってはこの苦味が美味しくてたまらない。
「そういえば…。」
あの後あそこはどうなったのだろうか。
流石に誰かが見つけているとは思うが…。
「それにしても、あいつ、弱かったな。」
分校で大口をたたいている割にはたかが知れていた。
この俺でさえも倒せないなんて。
俺が通っている学園、星園学園はこの国でも屈指の名門校だ。
能力者を鍛え上げるためだけに作られた学園。
その学園には、本校と分校がある。
本校では、能力者をより強い能力者にするための訓練などを行っている。
そして分校では、本来生まれ持って能力を持っていない、所謂「非能力者」を能力者にするための訓練などを行っている。
俺は、そんな学園の分校に通っている。
昨日殺した輩は本校の生徒だ。
あいつは度々憂さ晴らしに分校に乗り込んできて分校の生徒を傷付けたり殺したりしていた。
だが、俺に負けてしまった。
あの星園学園の本校の生徒だというのに。
ここまで本校の生徒が弱くなってしまった原因、それは明らかに経験だろう。
近年、この国は平和で満ちていた。
この前までは能力者による犯罪が度々起き、警察や本校の生徒がそれを解決しに行っていた。
だから昔の星園学園は強かった。
それは、当時5歳位の俺でもはっきりとわかるほどに。
だが、今ではその強さも、箔もなくなってしまった。
全ては経験する場数が少なくなってしまったから。
「もったいねぇな。」
そう言葉をこぼさずにはいられなかった。
そして俺はコーヒーを飲む。
うん、美味い。
外では小鳥がさえずっている。
ここまで平和な空間は、この場所以外にないだろう。
この平和さが、コーヒーで覚ました眠気を再び呼び戻す。
俺は大きく欠伸をした。
「もうひと眠りするか。」
そう言って、寝室に向かおうとすると、
「……誰だ。」
家のチャイムが鳴った。
昨日のことがある故に俺は少し身構えてしまった。
だが、昨日の今日だ。
警察もそこまで有能ではないだろう。
だったら一体誰が…?
万が一の事が起こっても良いように俺は注意を払って玄関に向かった。
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玄関扉の前に立ちドアスコープを覗いてみると、
「…なんだ。」
どうやら注意を払う必要も、身構える必要もないらしい。
「でも、なんで…。」
今日は休みの日だったはずだ。
……多分、いやでもどうだったか。
そんな事を思いながら俺は玄関扉を開けた。
「おい、なん‥」
「一馬!今日も一緒に学園行こうって約束してたでしょ!」
遮られた。
朝から騒がしい奴である。
というか、そんなことよりも、
「えっ、学校…?」
「そう!って一馬、制服に着替えてないじゃない!どうしたの!?まさか、寝坊でもしたの!?」
「待て、ちょっと待ってくれ…。」
俺は考えたくない事実を口にする。
「今日って、学園あったのか?休みじゃ、なかったのか…?」
俺がそう言うと、こいつ、一ノ瀬京香は、
「……はぁ?」
と、呆れたようにため息をついた。
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