6話 争い事

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6話 争い事

それから時間は過ぎていって、気づけば放課後になっていた。 俺は今帰宅している最中だ。 そして隣には、 「おい、大丈夫かよ。」 今だに落ち込んでいる京香がいた。 「だって、本校の人が殺されちゃったんだよ?」 「私、争い事嫌なのに、こんなことが身近で起こっちゃったら、こうなるに決まってるでしょ…。」 そして、 「まぁ、非能力者にしてみたらちょっと刺激が強かったかもな。」 琉生がいた。 「その割には、琉生は全然動じてないみたいだけど?」 京香がそういうと琉生は言った。 「俺、こういうのには慣れてるからな。色々ドラマとか見て。」 「いや、ドラマかよ。」 俺は思わず琉生にツッコんでしまった。 ちなみに言うと、京香は俺のこの能力を知らない。 見ていてわかる通り、京香は争い事が大の苦手だ。 この俺の能力を京香に知られてしまったら、俺の性格を知っている京香だったら間違いなく俺を止めに来る。 それに、争い事にわざわざ京香を巻き込みたくない。 だからもちろん、「狂った世界を変える」という俺の目的も京香には言っていない。 いや、言えないと言ったほうが正しいか。 兄弟に隠し事はなるべくしたくないが、これに関して言えばもうどうしようもないのだ。 だからこの事件の犯人が俺だと悟られることもない。 「早く犯人捕まらないかなぁ、このままじゃ不安で夜も眠れないよ。」 まぁ、俺なのだが。 「犯人が殺したやつは本校の奴なんだろ?」 「だったら能力者とか、そういう系統の奴をこれからだったら狙っていくと俺は思うけどな。」 「そうだといいんだけどなぁ。」 琉生がすかさずフォローを入れてくれる。 ありがたい限りである。 「そういえば。」 そうして俺が口を開く。 「3人で一緒に住む話はどうなったんだ?」 「えっ、何?そんな話出てたの?」 何も知らない琉生が口を開く。 「あぁー、その話ね。」 「家事とか色々面倒だから、みんなおんなじところに住めば分担とか出来て良いんじゃないかって話してたんだよ。」 「俺の提案なんだけどな。」 京香が説明してくれたものに俺が付け足す。 「なるほどねぇ。」 「後、今日みたいに学校忘れる事もなくなるからね。」 そういって、京香は少し笑みを浮かべながら俺に指をさす。 「その事に関しては迷惑をおかけして本当にすみませんでした。」 俺は謝る事しか出来なかった。 だって、しょうがないじゃん? 昨日あんな事があったんだから。 それに今日は金曜日。 さすがに曜日くらい少し間違えてもおかしくないんじゃないか……多分……。 「まぁいいよ。別に怒ってるわけでもねぇんだから。」 「それにしても、同居かぁ…。」 「別に良いと思うけどな、俺は。」 そうして琉生は同意してくれる。 「私も別に大丈夫だよ。」 「昔、おんなじ屋根の下で生活してたんだし、同居もむしろいいんじゃない?」 京香も同意してくれた。 「んじゃあ、決定だな。」 「家や家具や何やらはまた今度話そうぜ。」 俺がそういった刹那。 「……な、なんだ!?」 地面が揺れ、遠くでは凄まじい音が鳴り響いた。 俺らは全員動揺する。 「能力者関連の騒動か?」 琉生が口を開く。 「俺、ちょっと様子見に行ってくる。」 「何言ってんの一馬!私達無能力者があんなところ行ったって意味ないんだよ!」 「大丈夫。」 「何を根拠にそんなこと…。」 「作戦があるんだ。無能力者なりにあいつらの騒動を止める作戦。」 「作戦……?」 「あぁ、だから京香はここで待ってて、必ず戻ってくるから。」 「で、でも!」 「大丈夫。京香、争い事嫌いなんだろ?だったら俺が、その争い事を止めて来てやる。」 「争い事が起こるより、家族がいなくなる事のほうが嫌なんだよ!」 「大丈夫。俺はいなくならない。生きて必ずここに戻ってくる。だから少しの間ここで待っててくれ。」 「琉生。」 そうして俺は琉生に声をかける。 「琉生は、京香のそばにいてやってくれ。」 「自分だけ格好つけやがって。」 「ごめん。」 「わーったよ。それはお前にしか出来ない事だ。ただ、絶対生きて帰ってこいよ。」 「あぁ、任せた。」 そうして俺は音の鳴る方へ疾駆する。 未だに凄まじい音が鳴り響く。 それは耳をつんざく程の音だった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「大丈夫かな…一馬。」 京香が不安がっている。 「絶対大丈夫だ。一馬はこんなとこで死ぬような奴じゃない。言ってたろ?作戦があるって。」 「一馬は、正義感の強いやつだけど、他人まで救うような事は普通しない。」 「それをするって事は、よっぽどその作戦に自身があるってことだ。心配する必要ない。」 「だと、いいんだけど……。」 京香にそう言い聞かせながら俺は心の中で叫ぶ。 死ぬなよ……一馬!
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