「樹医少年が待つからく」

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とりあえず、自分を落ちつかせるため、 周りの木々の名前を推測して回った。 クヌギ、ナラ、カシ、マツ、ウメ、もみぢ、 竜血(樹)、オーク、樺やサクラ、 あれ、木の種類も変てらなのか。 樹医青年は迷いて来たり。 その来たりこそ、今失す…何故なら、 そろそろここから戻りたいのが、 どんどむ薄れて零になり行く。 言はずとも判る、「俺」が独する。 「俺」というものが離れていくということを。 やがて青年は樹木に与してしまった。 形は人間だが、精神は枯れ木のようなモノに。 この田暮はあるひ、やはり生きたくなった。 動けない体を動かそうとした。 だが、その隙に記神樹が(ここでは、本に よく使われる木)囁いてきた。 ここに迷った人間ハ、 いざ魅入られにきタノデショウ。 いくらも要らなヒ、猶予を捨てヨ。 どうせ「き」にはならなくナルゾ 青年は、はて、どの木であろうか。
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