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九品仏駅を出て真っ直ぐ進む。既に時刻は夜の10時過ぎ、退屈そうに道を歩くサラリーマンを追い越し、学生用マンションの中へ滑り込む。階段を上がって自身の部屋に辿り着くまで彼女は無心だった。何も考えず、ただ足が動く。何度かため息を漏らしていたものの、それに彼女が気付くことはなかった。 扉を開けて鍵を閉めると、手洗いやうがいもしないまま彼女は廊下を進んでいく。部屋の電気をつけてトートバッグを放り投げると、北川は勢いよくレースシャツとジーンズを脱ぎ捨てた。 下着姿のまま彼女は部屋の隅に置かれた全身鏡の前に立つ。数時間前まで何度も愛撫され、彼の欲に塗れた体がガラスに映し出される。 言いようのない不安を腹の奥底に沈めたまま、北川は憂鬱な気分のまま、自ら乳房に触れた。 ブラジャーの上から脂肪の塊を揉みしだく。既にとろんとした目が彼女の体を舐めまわし、ぞくぞくと快感の波が押し寄せる。 たったそれだけで彼女の膣はしっとりと濡れていた。 「あっ、んっ…」 掌をショーツの裏に忍ばせ、指を2本折り曲げる。ローションを塗りたくったようにぐっしょりとした表面を掻き乱すと、膨れ上がった陰核が刺激され、北川は甲高い声を漏らした。 中指と人差し指が膣口を割る。ぬるりと入った指先は水溜りの表面を子どもが波立てるような音を鳴らし、濡れた内壁をざらりと撫でていく。その都度足の付け根がびくんと跳ねる。さらなる快感を求めようと指を奥へ進ませた。 つい数時間前までコンドームを纏った武本自身が出入りを繰り返していたことを思い出し、底に溜まった憂鬱な気分と湧き上がる性欲が入り乱れる。 しかし2つの感情が先に勝ったのは、後者であった。 前に立つ全身鏡を一度見る。そこに映っていたのは己の欲望に塗れた、下着姿の彼女だった。みっともなく武本の上で喘いでいた自分を思い出し、臀部から鳥肌のような感覚が襲う。 「はっ、ああっ、いくっ…」 びくんと腰を前に突き出し、北川は2度目の絶頂を迎えた。その衝撃でブラジャーに収まっていた乳房が揺れる。咄嗟に口元を掌で覆ったものの、淫らな声は部屋の中に響き渡っていた。 荒い息遣いのままショーツから手を抜く。指の腹に付着した藍液をまじまじと眺めると、大きなため息をつく。 ティッシュを数枚抜いてそれを拭うと、乱暴にゴミ箱へと投げ捨てた北川は下着姿のまま部屋の隅で立ち尽くし、一筋の涙を零した。
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