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「ええ。朝と昼間に、二回も訊いてきたの。まだ寝てますよ、って伝えておいたわ。山瀬さん、市川課長と仲良かったの?」
急に不適に笑う先輩達に狼狽えながら、首を左右に振りました。
「お仕事ではあのお世話になってますが、それだけですよ。多分、企画課で進んでいるプロジェクトのことじゃないかと...」
「まあ、そうなの。旅行中にまで仕事の話しなくてもいいのにねぇ。じゃああたし達これから温泉入ってくるからね。夕飯は自由よ。知ってるよね?」
「あ、はい。私も、後で適当に食べます」
あたし達美人湯に行くのよ~っ、戻ってきた頃には美人になりすぎて誰かわからないかもよ~っ、と愉しそうに笑いながら先輩達は部屋を出ていきました。
それを笑みを浮かべて見送っていた私ですが、引戸が閉まると同時に青ざめます。
課長が私を探している...?
先輩達には咄嗟に仕事のことだろうと言いましたが、仕事の話とは思えません。
とすると、なんでしょうか...。
胸がソワソワします。
昨晩の幽子は確かに怪しい限りではありましたが、でも課長にバレているとは思えません。昨晩はあんなに熱い熱い、あ、熱すぎる夜を過ごしたじゃないですか。
思い出すと身体中が火照ってしまうのに。
バレてはいないと思うのに。
それなのに、この不安はどこから来るのでしょうか。
本能が、課長と話してはいけない、と私に言っているような気さえしました。
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