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本能がそう言うのなら従うべきではないのでしょうか。
もう少し時間が経った後、例えば明日なら、心も落ち着くでしょうから、その時課長と話すのはどうでしょう。
そこで私は考えました。
こうなったら、夜まで温泉を回りみんなが寝た頃に部屋に戻ることにします。クタクタで課長とは会えなかった設定にしてしまいましょう!
妙案です!
なんて小賢しいんだと呆れてしまいますが、今課長に会う勇気は何故かないのです。
早速温泉に向かおうとトートバッグに着替えなどを入れていきます。万が一課長に会ってしまったときの為にマスクも装着。
日は沈んでしまったようで、窓から見える空は薄い紫です。
課長には申し訳ないですが、緊急事態というわけではないと思いますし...。
それでも、すみません、と心の中で謝りつつ梅の間の出入り口の引戸を開けると、少し先の廊下の壁に背をもたれて立つ課長がいました。
「おはよう」
「...えっ!?なんでいるんですかっ」
驚きすぎて落としてしまったトートバッグを拾うと、その間に課長が目の前まで歩み寄って来ていました。
「さっき訊いたら起きたって言うから」
「...そ、そうですか」
それはきっと総務の先輩に聞いたのでしょう。なんということでしょう。行動するのが遅すぎましたっ。
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