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その考えをかき消すように、幽子と唇を合わせた。
「ずっと考えてた。幽子が来てくれたらって」
『謙一郎さん...』
「会いたかった」
何度も重ねたキスは本能のままに下がり、彼女の浴衣の繋ぎ目にまで唇を落とす。
お互い、物理的には何も感じないキスだが、別のところでは感じているのかもしれない。
幽子が甘い声を出した。
普通の人なら聞こえないその声は、俺の一物にはしっかり聞こえたらしい。
呼んだか、とでも言いたげに反応されれば「参ったな」と呟く以外なかった。
本当に参った。
暫く参った状態をなんとかギリギリで耐えながら話していたが、衣類の脱ぎ着問題を話しているうちに『私は謙一郎さんとなら先に進みたいって思うんですっ。す、好きなんですっ』と気持ちを伝えられるとやばかった。
何がやばいって俺のナニがやばかったわけだ。
「矛盾してるな」
『...すみません』
「それに...。今日は落ち着きもない」
幽子は俯いたが、そう言う俺だって落ち着きはない。
特に下半身は今にも騒ぎ出したくてムズムズしているような状態だ。
「幽子。俺も君が好きだ」
気持ちを伝えて唇を何度も重ねたが、想いは通じ合っても体は物理的に通じ合えないのがもどかしい。
「幽子が生きてたらな...」
つい本音が漏れてしまった。
こんなことをもう死んでしまった幽子に言うのは失礼だったと思う。
俺の胸に顔を埋めた彼女が泣いているような気がして、自分の発言に後悔しながら幽子の背中を撫でた。
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