えっちゃん

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 お昼休憩のチャイムが鳴りました。  早く謙一郎さんに会いたくて急いで準備をて立ち上がります。 「山瀬さん」 「はい。なんですか」 「でも、折角なんで食堂まで一緒に行ってあげますよ」 「......はあ。...じゃあ食堂まで」  まるで私が頼んだみたいな言い方をする斎藤さんに呆れてしまいましたが、結局行き先は同じなので一緒に行くことにします。 「市川課長とはどうなんですか?付き合ってからもう、三ヶ月くらい経ってますよね」 「はいっ。とても楽しく、日々幸甚の至りを味わっています」 「そうですか。雰囲気も変わりましたよね、山瀬さん」 「見た目が少し変わりましたからね」  実は私もほんの少しイメチェンをしてみたのです。  まず眼鏡をコンタクトにしました。  ずっと、あのよくわからない柔らかいガラスのような何かを眼球につけることに恐怖があったのですが、慣れてくるととても快適です。  そして、前髪も伸ばして横に流してみました。  傷痕はコンプレックスのままなので隠していますが、仮に誰かに見られてしまっても平気です。  謙一郎さんが「俺は好きだよ、この傷痕。もしすみれのクローンが出てきてもこの傷痕でどっちが本物かわかるだろ」と言ってくださったからです。  最後にマスクもさよならしました。  本当に大したことないイメチェンですが、初日は何故か社内がざわつきました。 「ついに山瀬すみれが素顔を公開したぞ、ってことらしいですよ」と斎藤さんが教えてくれたのですが、視線が私に集中したので大変居心地が悪かったです。  しかし、翌日には全てが元通りでした。  皆さん、大して私に興味がないようです。わかっています。  斎藤さんのように美しければ違ったかもしれませんが、別にいいんです。私は自分の顔に満足していますから。  だって、だってですよ。  謙一郎さんが好きだって言ってくださるんですからっ! 「感情が表に出すぎてますよ」と斎藤さんに言われ、自分が鼻歌まじりにスキップをしていることに気づきました。  謙一郎さんとのお昼にワクワクが止まらないんですね。
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