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食堂につきましたが謙一郎さんはまだいませんでした。
「じゃあ僕は行きますね」
「あ、はい。また後程」
斎藤さんは手を振って場所をお知らせしている西野さん達のところへ歩いていきました。
あんなに大人数での食事を実際のところどう思っているのか気になって仕事中に尋ねたことがあるのですが、斎藤さんはタイピングの手を止めることなくこう答えてくださいました。
「嫌な気はしませんよ。なんか、モテモテだった学生時代を思い出します。僕の言動一つでいちいち反応してくれるんで、猫を転がして遊んでいるような感覚がして楽しいです」
「...そうですか」
斎藤さんはサイコパスかもしれません。
それかちょっぴりゲス男なのかもしれません。
いずれにせよ、大人数の食事を苦に思っていないなら良かったですし、たまに私も仲間に入れてくれてありがたいです。
斎藤さんは掴みきれない人ですが、共に総務課で働く同志であることはやはり変わりません。
「山瀬」
背後から聞こえた声に心臓がドキンと跳ねました。
振り返れば謙一郎さんです。
「けんい...課長!」
思わず謙一郎さんと言うところでした。
しかし会社では苗字で呼び合うと決めているんです。
お付き合いしていて、それを気づいていらっしゃる方も多いですが、一応働き場では私情を挟みすぎない、という事に二人で話して決めたんです。
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