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私はおにぎりとお味噌汁を選び、課長は幕の内弁当を選びました。
窓際のテーブルに向かい合わせになって座ります。
付き合い当初は周りの視線が気になってしょうがなかったですが、今はもう慣れました。
お昼休憩では主にそれぞれの課内でのことを話したりします。
「総務に蜂が?」
「はい。大混乱でしたよ。みんなこの世の終わりのような顔をして逃げ回ってました」
「まじか...。結局どうなったの?」
「それが、斎藤さんがどこからか風呂敷を持ってきて、それを広げて蜂をスッと捕獲して、そのまま外に出したんです」
「へえ、お手柄だな」
「割れんばかりの拍手喝采でした」
「これはまた人気が上がるな」
二人して向こうにいる斎藤さんへ視線を向けます。
斎藤さんが爽やかに笑うと周りの女子社員の目がハートになっています。
本当にモテモテです。
「企画課はどうでしたか?今日も忙しいですよね」
「今日はそんな忙しくなかったよ。スムーズだった。だから山瀬とご飯食べれる」
「あ、ありがたいですっ」
「だな」
キュンッ!
「あ、そういやさ、さっき山田が企画課の出入り口に酒置いてたんだよ」
「山田さんが?」
「そう。何やってんだよって聞いたら恋愛成就祈願とか言って」
「へえ」
「そこにいた霊もう成仏したぞって言ったら落ち込んでたわ」
「好きな人でもできたんでしょうか」
「かもな」
そうなんです。
実は、企画課の地縛霊ことえっちゃんは、もう成仏したのです。
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