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幽体離脱における私の行動
皆さんは幽体離脱できるとしたら、何処へ行って何をしますか?
私ですか?私は動物園に行って夜行性動物を見たり映画館へ行ってタダで映画を鑑賞します。
て言うのは嘘です。すみません。そんな可愛げのある行動はもうしていません。
正直に言います。お恥ずかしい限りなのですが、私は不謹慎ながら好きな人の家へ侵入しその人の生活を実見します。
そして今まさに、実見している真っ最中です。
私が侵入しているのは、勤めている会社の企画課の課長、市川謙一郎(31)宅。
七階建てマンションの最上階で、窓を開けると風通しが良く、夏場でもエアコンいらずな快適さ。お掃除好きなのか、何度か侵入させて頂いていますがいつも整理整頓してあり清潔な印象。
シンプルながらデザイン性のある家具が適所に置かれ、一人暮らしにしては広すぎるとも言える2LDK。二つある部屋の一つは寝室で、もう一つは鍛えることが大好きな市川課長が己の筋肉を育てる部屋。
そして現在私はその自家製ジムの天井の隅に身を潜め、市川課長の伸縮する筋肉と苦しげな息遣いを見聞きしています。
そうです。課長は今、筋トレの真っ最中なのです。
黒い上下セットのスポーツウェアを着て、ドアの取手のような形をしたプッシュアップバーという器具を用いて腕立て伏せをしています。
上から眺めますと、背中、腕、脚の筋肉の動きが良く見えます。なんと逞しい体なのでしょう。自分磨きに余念のない課長にますます惹かれてしまいます。
暫くそのトレーニングをうっとりと眺めていると、課長は部屋の外に出ました。勿論私もその後ろを尾行。
寝室へ行ってクローゼットから下着やタオルを取り出したのですぐに察しました。お風呂に入るのですね。大丈夫ですよ。流石にお風呂まではついていきません。私もそこまで無遠慮でも助兵衛でもありません。
課長が出てくるまで、私はリビングをウロウロと浮遊することにしました。
今回でこの家に侵入したのは五回目で、その度に隅々まで観察しているのでこれといって何かに目がいくわけではありません。ただ、課長は読書好きなようで壁棚には本がたくさん並んでいます。それを端から端まで順に見ていくのはいつ来ても楽しいです。
同じ本をいくつか持っているので共通点もあるにはあるんですよ。
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