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未以子(みいこ)
今日はすっごくラッキーだった。
帰りの電車の中で一人窓の外を眺めながら、あたしは嬉しくてたまらなかった。
地下を走る電車の窓からは、暗いトンネルの中みたいな風景しか見えない。
もちろん、あたしのテンションが上がっているのは目の前の景色にではなくて、さっきまでのできごとに理由がある。
理由はだいすきな友達の来見だ。
今日は彼女の可愛らしい一面をたくさん見ることができた。
彼女は『くーるびゅーてぃ』という感じの雰囲気の美人で、男の子によくモテる。だけど、近寄りがたい雰囲気があるから、誰も気安く声はかけられない。一番距離が近いのはあたしだという自覚があって、あたしはそれにちょっと得意になったりしている。
そんな彼女は実はとても照れ屋さんなのだ。あたしが口にする『だいすき』に、ちょっと照れたように顔を赤くするのは、本当に可愛い。今日はそれだけじゃなくて、傘を持ってなかったあたしのために相合傘をしてくれて、それだけでもなくて、あたしが濡れないように傘をあたしの方に傾けてくれていた。自分が濡れちゃうのに。だから、彼女が濡れないようにくっついたら、それだけでいつもよりも顔を赤くして、声まで少しうわずるぐらい照れているのは、本当に可愛くてたまらなかった。
こんな姿を男の子が見たら、きっといつもの『くーるびゅーてぃ』な姿とのギャップで、さらに人気が出てしまう。それだけじゃなくて、別に近寄りがたくないかもなんて思われて、彼女に親しげに声を掛けてくる男の子も出てくるかもしれない。
来見もいつかは好きな相手ができて、その人がカレシになって、結婚することになるのだとは思う。だけど、それは遠い未来の話だ。今彼女にカレシなんてできたら、あたしと過ごす時間が減る。
そんなことは望んでいないので、彼女の可愛らしい一面はあたしだけの宝物にして、誰にも話していない。
今日はそんな彼女の可愛らしい一面をいつもよりたくさん見れた。だから、今日はとてもいい日だ。
暗い窓の向こうにぼんやり見えるあたしの顔は、とっても嬉しそうに微笑んでいた。
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