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第三章[夕輝]
「で…澤井の家は、右行けばいいのか?」
隣の運転席に座る夕輝先生を黙って見つめてみた。
「俺の家は左行くから…さっき反対方向とか言ってたな?」
「…。」
この人の隣に座ってる自分に、イラついていた。
「俺らだけなんだし~知ってるくせにとか澤井?澤井ちゃん?林檎ちゃん?」
「林檎ちゃんは…やめてよ!」
「ふっ。」
「だから…もう、笑うのもやめてよ!」
「なに怒ってるんだよ。あー俺の事嫌いだったな、フッ。」
嫌い言われて…うん?私言ったかな?ああ…さっきから何度も言ったな。
ほんと、変人。
「雨降るの知らなかったろ?数学教えてるけど、本当は理科が好きなんだ。」
知ってる。
「三年前のあの日の空も…雨降ったけど、綺麗だったよな?」
「忘れた。」
「そうか、ふう。」
悲しそうな顔を私を見つめながら一瞬見せたものの、必死に笑顔を作っていた。
私達は三年前の春、この学校に入学する前に映画のワンシーンのような、ドラマにありがちな数時間を過ごしていた。
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