第三章[夕輝]

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「もうすぐやみそうだけど…寒いだろ?こい。」 「車濡れちゃうよ?」 「は?」 彼はエンジンをかけると、暖房を入れてくれていた。 「いいから乗れ。」 腕をつかまれ、私は助手席に座った。 「タオル…たしか。」 彼が急に近づいてきたから、私は身構えてしまった。 「あ?ふう…まったく俺も嫌われたもんだな。」 後部座席に置かれていた鞄からタオルを取り出すと、私に渡してくれた。 「拭いてやろうかと思ったけど…嫌いだろ?」 「…夕輝、先生は?」 「あ?心配してくれてるのか?とか…辞めとく、送るからシートベルトつけて。」 「え?あ、はい。」 ふと彼の顔を見ると、笑顔は消えていた。 怒らせちゃった…んだよね? これで、いいんだ。 どうなるわけでもない。
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