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必死にどんどんと溢れる涙をぬぐっていた彼女の頬に、手を伸ばし抱き寄せた。
「林檎、」
「夕輝…せ、ん。」
「辛いなら先生なんて呼ばなくていい!」
「はあ。」
震える彼女の背中をさすりながら、俺は彼女を抱きしめていた。
「私、ずっと…今もずっと。ずっと、はあ…夕輝、せん、うーん。」
「林檎、無理させててごめんな?」
おもむろに彼女から離れ、彼女を見つめた。
「すぐ辞めればよかったな?」
そう言った俺の言葉に驚いた彼女は、首がもげるんじゃないかと思うぐらい首を横に振っていた。
「おい。」
両手で彼女のほほをつかんで、俺を見つめさせた。
「林檎…。」
「はい。」
「愛してる、林檎がリンゴ嫌いでも。」
「フッ、もう。」
「うん?林檎、俺が知らない間にリンゴ好きになったのか?」
「…どうして?そうふざけるかな。」
「笑顔でいてほしいから…林檎が、俺の事嫌いでも。」
あの日、怖くなって動けなかった事をずっと後悔していた。
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