第6話秋営地オルダバザール続き

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第6話秋営地オルダバザール続き

前書き アリサとハティジェは母の手作り料理を食べてからヤンギケントに向かいました。ヤンギケントは、キメク・キプチャク連合と南で接していたトクズ・オグズの首都で中世の中央アジアにおける重要な都市の一つでした。 ★中央アジアの人々のことわざ 馬は飛ばしすぎて駄目になる、若者は無謀な乗馬で駄目になる。 ☆アリサ12歳とハティジェ11歳の行動 8d66adb1-6a06-4218-ac69-795f85266daed7ec47de-bc18-49e7-a231-ae303fbff791 オルダ・ウルス 88152f6d-a34c-4d22-9bbf-4ceeb677e1ead06b00b8-57c7-451c-80c2-efe232e36598 オグズ・ヤグブ州の地図 古い地図だが、ヤンギケントとジェンドの位置が良く分かる。 1363年6月27日火曜日午後1時:イマキヤ アリサ、ハティジェは母トクトゥが作ってくれた昼食を腹いっぱい食べ、母に感謝の言葉を掛けました。母はスブタイとクビライからの手紙を娘たちに見せ、貴女たちも部下たちに優しくして上げなさいと言いました。 ***** 尊敬するトクトゥ様へ、 今日の昼食の様子を報告いたします。部下たち20名は交易のためにヤンギケントに向かう準備を整え、出発の前に貴女が用意した昼食と酒を受け取りました。 貴女は厳かな表情で彼らの前に立ち、勇気と成功を祈りながら心温まる言葉を掛けてくれました。貴女は彼らにとって頼もしい指導者であり、その言葉は彼らの心を励まし、困難に立ち向かう力を与えました。 昼食は豊かな食材で準備され、熱いスープ、香ばしい肉料理、新鮮な野菜、羊乳、バター、チーズなどが彩り豊かな食卓に並びました。彼らは感謝の気持ちを込めて美味しい食事を頬張りながら、貴女の存在と温かい心遣いに感動しました。 また、馬乳酒(クムス)も豊かに注がれ、彼らは祝杯を挙げました。酒杯が交わされる中、部下たちは団結し、貴女の指導の下での成功を心から願っていました。 昼食の献立は、彼らの体力を保ち、満足感を与えるためにバランスの取れた組み合わせになっておりました。 1️⃣熱いスープ: 貴重な肉や野菜を使用した栄養豊富なスープで、温まりながらエネルギーを補給することができました。 2️⃣香ばしい肉料理: ハーブやスパイスを使って調理された肉料理は、しっかりとしたタンパク質源であり、彼らの筋力と持久力をサポートしました。 3️⃣新鮮な野菜: 野菜は彩りと栄養を提供し、バラエティに富んだサラダや炒め物などの形で提供されました。これにより、ビタミンやミネラルを摂取し、健康を維持することができました。 4️⃣馬乳酒: 馬乳酒は遊牧民の伝統的な飲み物であり、彼らの文化と結びついています。馬の乳を発酵させたもので、爽やかで微かなアルコールを含んでいます。これは彼らに活力を与え、士気を高める効果がありました。 貴女の手作り料理と馬乳酒は、部下たちの心と体を癒し、彼らの任務に向けたエネルギーを与えました。彼らは貴女の心遣いに感謝し、食事を囲みながら団結し、勇気を養いました。 引き続き、貴女の優れたリーダーシップのもとで、部下たちが成功と栄光を収めることを願っております。貴女の励ましとおもてなしのおかげで、彼らの心には士気が高まり、ヤンギケントへの旅がさらに意義深くなりました。貴女の存在は彼らにとって心強い支えであり、自信を与える存在です。 今回の交易が成功し、部下たちが無事に帰還することを心から願っています。貴女の指導力と優れた判断力によって、彼らは安全に任務を遂行し、繁栄と栄光をもたらすでしょう。 貴女の偉大なる指導者としての存在は、彼らだけでなく私たち全員にとっても大きな誇りです。引き続き、貴女の指導のもとで繁栄と発展がもたらされることを願っております。 心から敬意を込めて、 トクトゥの忠実なしもべ「スブタイ、クビライ及び部下20名一同」より ***** 母トクトゥの満足げな顔を見ながら、アリサとハティジェは思いました。 スブタイとクビライはトクトゥお母さんのことを崇拝しているからね。これくらいのことは言うよね。ふたりのお母さんを見る目の熱いことたらないわよ。お母さんよりも私のことを崇拝すれば良いのに。どうして男たちは若い私達よりもお母さんのことを好きになるのかしら。不思議でたまらないわ。 スブタイとクビライがアリサとハティジェを呼びに来ました。ふたりの熱い視線を全身に浴びながら、トクトゥは彼らに指示を出します。 ヤンギケントに交易に行かせるのは他にも意味があるのよ。お前たちもアドリアンがエカチェリーナ王妃をオルダ・ウルスのハン「トグリ・テムル」から奪ってジェンドに匿っていることは聞いて知っているでしょう。 トグリ・テムルの追手が何処まで迫っているのか偵察してきなさい。何名くらい居るのか、武器はどんな物を持っているのか。すべて調べてくるのよ。 スブタイとクビライは恭しく片膝を付き、命を掛けてトクトゥ様の命令を遂行いたしますと頼もしく応えた。 24名はヤクート族からもらった丈夫な馬に乗り込み、イマキヤからオルダバザール→ヤンギケントへと進んだ。 キプチャク草原上を駆け抜けるのは爽快なものでたったの一週間しかかからなかった。 その間はトクトゥが用意してくれた懐中食を食べて過ごしたが、栄養のバランスも考えた懐中食ですこぶる美味しかった。 体力と持久力を保ち、旅路でのエネルギー補給を考慮し、トクトゥは慎重に懐中食を選びました。 1️⃣乾燥した肉: 貴重な肉を塩漬けや乾燥させたものです。軽量で持ち運びやすく、タンパク質を豊富に含んでいます。 2️⃣硬いパン: 持ち運びやすく、保存性が高いパンです。小さなパンやクラッカーの形状で、エネルギー源として役立ちました。パンは小麦を栽培しているオアシス都市などで入手したものです。 3️⃣乾果やナッツ類: 高カロリーで持ち運びやすい乾燥果物やナッツ類です。エネルギー補給に役立ち、満腹感も与えました。 4️⃣チーズや乾酪: 長期保存が可能で、タンパク質や脂肪を提供する乳製品です。持ち運びに適しており、栄養価も高いです。 5️⃣乾いた果実と野菜: 乾燥した果物や野菜は、水分を含まずに持ち運ぶことができます。ビタミンやミネラルを補給し、栄養バランスを保ちました。 トクトゥは馬用の飼い葉も用意しました。 馬は旅の中で重要な存在であり、適切な飼料を与えることは彼らの力強さと持久力を維持する上で重要です。 1️⃣牧草: 広範囲で入手可能な草を主な飼料として使用しました。地域によって異なりますが、乾燥した草、草の束、または刈り取った草を馬に与えました。 2️⃣シュミーズ: シュミーズは乾燥させた樹木の葉や小枝です。これは馬が食べやすく、栄養豊富な飼料として使用されました。 3️⃣乾燥穀物: 馬は小麦、大麦、オート麦などの乾燥した穀物も食べることができます。これらはエネルギー源として役立ち、馬の力強さを維持しました。 4️⃣ルーツやバルク: ルーツやバルクは馬にとって重要な水分と栄養源です。これらは地域によって異なりますが、根菜類や塊茎のようなものが使用されました。 5️⃣乾燥果実: 乾燥果実も馬の飼い葉として提供されることがありました。馬が栄養を補給し、旅の途中でのエネルギーを保つのに役立ちました。 これらの飼い葉は、馬たちが旅の中で必要な栄養を摂取し、力強さと持久力を維持するのに役立ちました。 1363年7月4日火曜日午後1時:ヤンギケント 1220年にチンギス・ハンによって破壊された町はオルダ・ウルスの名の下に再興され、シルクロードの中継点に当たるこの町はますます発展を遂げていた。 アリサたちは、馬車で、 黒貂(クロテン)「セーブル」の毛皮50枚、シルバーフォックス、ミンク、アーミン、(テン)白貂(シロテン)などの毛皮「それぞれ100枚」を持ち込んで運んできた。 アリサたちは夏の暑い日、交易都市のヤンギケントに黒貂(クロテン)「セーブル」の毛皮50枚、シルバーフォックス、ミンク、アーミン、(テン)白貂(シロテン)などの毛皮「それぞれ100枚」を売りにやってきました。彼女は貴重な毛皮を持ちながら、市場での取引を待ちながら興奮していました。 ヤンギケントの市場はにぎやかで、商人や旅行者が集まっていました。ハティジェは一角にある毛皮市場に向かいました。そこではさまざまな毛皮商人が出店しており、彼らの声や交渉の声が飛び交っていました。 ハティジェは自身の持つ毛皮を丁寧に展示し、高い価値をアピールしました。すぐに興味を持った買い手たちが近づいてきました。彼らは毛皮の品質を確かめ、ハティジェとの交渉を始めました。 取引の過程では、ハティジェは巧みな交渉術を駆使し、自身の財産を最大限に活かそうとしました。彼女は自信を持って価格を提示し、買い手たちとの間で値段を競い合いました。ハティジェは黒貂の希少性や上質さを強調し、その価値を訴えました。黒貂一枚で当時5人家族を一月分養えたのです。特にシベリア産のものは高値が付きました。 交渉の結果、ハティジェは手にした黒貂の毛皮50枚を高値「一枚で大金貨4枚」で売ることに成功しました。残りの毛皮も「一枚で大金貨2枚」の値段で売りました。合計は大金貨1,200枚となりました。彼女は満足げな笑顔で収益を手にし、他の商品を探すために市場内を歩き始めました。 ヤンギケントの市場はさまざまな商品や文化が交錯する場所であり、ハティジェはその賑やかさと活気に包まれながら、新たな取引の機会を探しました。彼女は他の商人との出会いや交流を楽しみながら、次の取引に備えました。 アリサは(いしゆみ)を探しましたが、誰も売っていなかったので、ブーツと靴下をそれぞれ1,000足購入することにしましたが。一足あたり小金貨一枚「6,000円」とふっかけられハティジェを呼びました。 女だと思って馬鹿にするんじゃないよ。こんな物スキタイ族が履いていたものと同じじゃないか。1,600年以上も前のデザインと同じだろう。目一杯高く買ってやっても50足当たり小金貨一枚だよ。その値で売るなら全部買ってやっても良いよ。 お客さん。それは酷すぎますぜ。デザインは同じでも革も只ではありませんからね。 それなら30足当たり小金貨一枚払ってやるよ。 10足当たり小金貨一枚でどうですか? 間を取って20足当たり小金貨一枚で行こう。 仕方がありませんね。その代わり、一万足ずつ買って下さいよ。 ハティジェは大金貨100枚「=小金貨1,000枚分」を支払ってブーツと靴下をそれぞれ一万足購入した。 アリサは20分の1で購入出来たことに目を白黒させていた。 ハティジェの一日は忙しく、活気に満ちた市場での取引によって充実感を得ました。彼女は毛皮の売却を通じて利益を上げ、自身の役割を果たしました。ハティジェは満足げな笑顔で市場を後にして宿屋に帰ります。 ☆スブタイとクビライ アリサとハティジェが市場に行っている間、ふたりは宿屋や鍛冶屋、両替屋、不動産屋などを回って情報収集に務めました。トグリ・テムルの代官詰め所の前に行ってみると、何百人もの兵士たちがぞろぞろと中へ入っていきます。 スブタイたちは高塀を乗り越えて代官所の中に潜り込みました。案の定中庭には投石機と火砲が何台も積み上げられています。こんなものでジェンドを攻撃されたらあっという間に城門は破壊されてしまいます。 スブタイたちは一計を案じ、真夜中まで庭の茂みに潜みました。午前2時頃、ふたりは手分けして代官所の油保管所を探します。クビライが見つけました。油を手持ちの皮袋に移し替え、投石機と火砲の周りに少しずつ慎重に流します。流し終えるや直ちに火を付け、一目散に宿屋に逃げ帰り、アリサとハティジェを叩き起こしてジェンドにいるトクトゥのところまで報告に行きました。 今回はここまでにいたしましょう。次回をお楽しみに。 後書き 次の話では戦を控えたアドリアンたちは拠点防衛に取り掛かる。固定住宅と砦を建設したいが木造では強度に不安があり、火災に弱い。セメント、モルタル、コンクリートがどうしても必要だ。
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