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「わかったよ、ハルちゃん。一緒に帰ろう」
「本当? 嬉しい!」
「そのかわり、帰り道でわたしの話聞いてくれる?」
「もちろんだよ。だってぼくはマミちゃんの親友だもん」
親友だと言われるなんて。わたしは言葉でなく笑みで返す。
「じゃあ帰ろう!」
ハルちゃんはわたしの手を引いて教室から出た。わたしはされるがままにした。この子は昔から強引なところがある。マイペースというよりも自己中心的なのだ。
玄関で上履きからスニーカーに履き替えるときも、ハルちゃんはわたしに話し続けた。今日の授業のこと、先生がかっこいいこと、給食に苦手なピーマンが出たこと。どれも取り留めのない話だ。
とはいえ今日わたしは高木たちがハルちゃんのプリントをわざと破いたり、掃除の時間に雑巾を投げつけたりした現場を見ている。
それなのにハルちゃんは、何事もなかったかのように学校が楽しいと語った。
校門を出ると、なだらかとは言い難い下り坂が待ち構えている。わたしはこの坂が嫌いだ。雨の日に一度、滑って膝を擦りむいたことがある。
今日は晴れているからその点は安心だが、子供に歩かせるような坂じゃないと、わたしは常々思っている。
「ねえ、マミちゃん。マミちゃんはさ、ダンゴムシって好き?」
「……好きも何も考えたことすらないよ」
さっきまで学校の話をしていたハルちゃんが突然話題を変えた。
とっさのことについていけなかったわたしは、それとない回答をする。わたしの答えが気に入らなかったのか、ハルちゃんは気難しそうな顔を見せた。
「ぼくはダンゴムシが好き。コロコロしてて可愛いもん。でも丸まっていないときも好き。モゾモゾ動く姿が可愛い」
「そうなんだ……」
モゾモゾという語感だけで、わたしは鳥肌を立てた。ダンゴムシは丸まっていたらたしかに可愛いけれども、通常時の姿は苦手だ。脚がたくさんある虫全般が苦手なのだ。ハルちゃんはどちらの姿も好きらしい。
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