4人が本棚に入れています
本棚に追加
「でもね、ぼく一度だけダンゴムシを殺しちゃったことがあるんだ」
「へ、へえ」
「幼稚園のころ、砂場で遊んでいるときに可愛いダンゴムシがいてね。五ミリくらいの大きさかな。ずっと丸まったままだったから、モゾモゾ動く姿も見たくて、ぼくは無理やり開かせたんだ。そうしたらプチって音がして、ダンゴムシが真っ二つになっちゃったの。だけどぼく偉いんだよ。ダンゴムシのお墓作ってあげたの」
「ダンゴムシの墓?」
「うん。土に埋めて、その上に石を置いた。でもねマミちゃんにだけ本当のことを話すと、本当は先生に怒られたくないから埋めたんだよ。殺しちゃったことがバレたら、ぼく怒られちゃうから」
「ふうん。可哀想だとは思わなかったの?」
「どうして? 虫だよ?」
「虫だって生き物なのに」
「誰かが悪いなら、あのとき丸まったままだったダンゴムシが悪いんだ」
ハルちゃんは当時の苛立ちを解消するかのように足元の小石を蹴った。小石は電柱に当たり弾かれた。
わたしはハルちゃんのふとしたときに垣間見える子供らしい残酷さが苦手なのだ。
最初のコメントを投稿しよう!