4人が本棚に入れています
本棚に追加
「ところでマミちゃん、ぼくに話って何?」
「話……ああ、そうだ、話」
わたしはすっかり本来の目的を失念していた。帰る前に先生に頼まれたこと。ハルちゃんに自分が高木たちにいじめられていると報告してもらう。でもそのためにはハルちゃん自身にいじめられているという自覚がなければならない。
わたしの見る限り、ハルちゃん本人にそういった自覚は感じられない。ここはストレートに聞いたほうがいいだろう。
わたしたちは帰り道の途中にある公園に寄り、ベンチに腰をおろした。
「ねえ、ハルちゃん。学校つらくない?」
「つらくないよ。どうして?」
「今日だって高木たちにひどいことされたじゃない。嫌じゃないの?」
「高木くん? ああ、あいつらね。嫌だけど、もう慣れたよ」
「慣れたって……。ねえ、ハルちゃん。いったいいつからひどいことされてたの? わたしが気づいていないときだってあったでしょ?」
「入学初日からいい顔はされなかったよ。あいつら、ぼくを気持ち悪そうに見るから。ただのガキだよね」
ハルちゃんはケラケラと笑った。乾いた笑いというよりも、どこかネジがとんだような不穏な笑いかただった。
「……ハルちゃんはさ、高木たちのこと先生に言わないの?」
「先生に? それは考えたこともなかった。言う必要ある?」
「あるよ。だって、わたしが先生に呼び出されたのってこのことだもん」
あまりに他人事なハルちゃんの態度に苛ついてしまったわたしは、思わず真実を口走ってしまった。はっとしてハルちゃんを見ると、複雑な表情をしていた。
「ハルちゃん……ごめん、今のことは忘れて」
「……そっかあ、マミちゃんにまで迷惑かけてたんだね、ぼくは」
「迷惑なんかじゃないよ。だってハルちゃんとは昔から友達だし、わたしは一応学級委員だから……」
「ふうん。先生からぼくについて何か言われたの?」
最初のコメントを投稿しよう!