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「斉藤(さいとう)、ちょっといいか?」
ハルちゃんのトンデモ発言から数日後、学級委員になったわたしに、先生が声をかけた。
「なんでしょうか」
「いやあ、その……教室じゃあ話しづらいから、職員室でもいいか」
先生の声色と視線から、ハルちゃんのことについてだと察した。今は帰りのホームルームが終わり、生徒たちが各々の用事のために帰り支度をしている。
当のハルちゃんは自分の席に座り、ニコニコとわたしを見ている。ハルちゃんの周りには誰もいない。
わたしはハルちゃんを無視して、先生と共に職員室へ向かった。
職員室はなんだか苦手だ。他人の家に来たみたいで落ち着かない。室内に入るまでのお決まりの作法を済ませて、わたしは先生の席に向かおうとしたが、前を歩く先生がはたと動きを止める。
「どうかしましたか?」
「参ったなあ」
先生が歳のわりに老けたように頭をかく。見ると、先生の席の周りに他の先生が何人か集まっている。
先生は夜凪中学校の先生の中でもかなり若い。派手な女子からはむーたんと多少なめられているが、好かれているようだ。
「斉藤、隣の小会議室でもいいかな」
「わたしはどこでも」
「助かるよ。ありがとう。すぐ行くから部屋の中で待っててくれ」
「はい」
わたしは先生の言葉とおりに職員室を出て、左隣の小会議室に入る。ここは初めて入るが、会議室とは名ばかりの物置き部屋になっていた。会議用の長机が二脚、折り畳んだパイプ椅子が六脚、壁に立てかけられている。
わたしはパイプ椅子を二脚広げ、先生と自分が座る場所を確保した。
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