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「先生が問題視しているのは、ハルちゃんの犯罪妄想よりも、ハルちゃんが先生に好意を持っていることですよね? その程度の問題でわたしを呼び出したんですか?」
「頼むよ、斉藤……。こんなこと誰にも相談できないだろ」
「先生が生徒から好かれることなんて、よくあることじゃないですか。吉沢(よしざわ)さんや三崎(みさき)さんたちにムーたんって呼ばれてて、先生満更でもないでしょ?」
「吉沢たちは、また別問題だろ」
吉沢さんと三崎さんは一年一組の中でもピラミッドの頂上にいる、いわゆるギャルたちだ。不良じみているが、根は真面目で明るいので、わたしは好きだが、彼女たちを好意的に見ている生徒や先生は少ないだろう。
「じゃあハルちゃんと吉沢さんたちは、どこが違うっていうんですか」
「それは……」
「顔ですか? 性格ですか? それとも日記に書かれたとおりのハルちゃんの妄想癖ですか? それらで判断するなら、先生失格ですよ。ハルちゃんがクラスでいじめに遭っているの知ってますよね?」
「……勘弁してくれよ」
「しませんよ。少なくともわたしは。現にそのノートが証拠です。ふやけた痕があるでしょう? 提出前に高木(たかぎ)に取り上げられて、教室内のグッピーの水槽に沈められたんです」
高木はわたしと同じ学級委員で妙に正義感が強く、男女問わずクラスメイトからの信頼が厚い。ガキ大将が正義のヒーローに目覚めた典型的なタイプだ。
その性格ゆえに、入学早々『大量殺人鬼になる』といってクラスを騒がせたハルちゃんを悪とみなしたのだろう。高木を筆頭にいじめが始まったのだ。
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