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トランの手が
スカートの中の私の太ももを撫でる。
気持ちが悪い。
トランは本気だ。
ブラッド、、、。
もうこれで本当に彼のそばにいられなくなってしまう。
貴方のそばにいられないのなら私は死んだも同じだ。
死んだも、同じ、、、。
死ぬ?
あぁ、そうか、
死ねば良いんだ。
途端に私の頭の中は、その事でいっぱいになった
そうだ、なんでこんな簡単な事を思いつかなかったのだろうか
どうせ汚されて死ぬのなら
汚される前に死ねばいいのだ。
そう思ったら、何だか急に笑みが漏れそうになった。私ったら、なんで今までこんな事に気付かなかったのだろうか、、、。
「分かったわ、、、あんたに抱かれてあげる」
「は?」
突然の私の言葉に、トランが私の胸のボタンを外していた手を止めた。
「ただし、外に出して。私と貴方はこれでも血が繋がってるの、妊娠なんてしたら困るわ。夫の子かどうかもわからないし」
「それは、、確かにそうだけどどういう」
戸惑ったのはトランは正気か?と私をマジマジと見つめる。
「どうせあなたに犯されるなら、無抵抗の代わりにこっちの条件も飲んで欲しいだけよ」
乱暴に言い捨て、さぁどうする?と彼を睨みつける。
しばらく彼は考えて、そしてククッと笑った。
「人妻になって随分と分かった口を利くようになったじゃねぇか。良いぜ!その条件飲んでやろう」
「じゃあこれと、足の外して。どうせブレイデンがいるから逃げられないでしょう?痕になるのが嫌だわ。」
そう言って戸口に座るブレイデンを顎で指す。
「何か企んでねぇよな」
眉を寄せて窺うように私を見る彼に、私は鼻で笑う。
「この状況の私に何ができるの?」
出来るなら教えてよ、、、と不機嫌に返せば
「それもそうか、、、」
そう言って彼は自身の座っていた椅子の隣にあるスツールの引き出しを開けて、小刀を取り出した。
「逃げらんねぇからな!」
そう言って私にもう一度跨ると、私の服の胸元を割いていく。
胸元の布が取り払われて、下着が覗いた。
「先にこっち!」
抗議するように縛られた手を差し出せば、彼はうんざりしたように大きく息を吐いた。
自分のペースを乱される事にイライラし始めたらしい。
彼は乱暴に私の手を引くと、刃を紐にかけて、切った。
私はその時を待っていた。
自由になった手で、すぐに彼の刃物を持つ手首を掴み、遠慮なくひねった。
もともと大して喧嘩の強くないチンピラだ。戦争の功績者であり、王族の騎士直伝の護身術には敵うはずもない。
カランとすぐに、彼の手から小刀が落ちる。
私はそれを素早く拾うとそれを自分の首に当て、一気に引いた。
躊躇する気持ちは一切なかった。
ごめんなさいブラッド。
貴方がこんなために授けてくれた護身術でない事は分かっている。
だけどもう、こうするしか私は私を守れない。
これ以上、貴方に顔向けできない罪を背負いたくはないの。
首に生暖かい感触が広がる。
目の前の、トランが驚いたように目を見張るのが見えた。
最後がこの男の顔というのが嫌だ。そう思って後は目を閉じた。
まぶたの裏に、ぼんやりとブラッドの顔が浮かぶ。
ごめんなさい。
愛してるわ
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