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「もしまだ君が死にたいと思うなら、止めない。でも俺も一緒に逝く。」
抱きしめた彼が、耳元でささやいた言葉に、私ははっとさせられた。
彼と私、考えていた事が同じなのだ。
蘇ってきたのは、トランに組み敷かれた時に考えた事だった。
彼の側にいられなくなるなら、死んでしまおう。彼のいない人生に耐えていける自信がない。
彼も同じように思ってくれていると言うのだ。
ふるふると小さく首を振って、彼のシャツを掴む。
「もう、死ぬつもりなんて無いわ。だから死ぬなんて言わないで」
貴方が死んでしまうなんて考えたくも無い。
そう思って、あぁきっと彼もそんな思いでずっと側にいたのだろう。
命を断とうとした私を前に彼はどれほど自分を責めて。そして怖かったのだろうか。
結局私は、自分の事しか考えていなかった。
残された彼がどう思うのか。
大切な人の苦しみを知らずにいた事で、彼が自分をどれほど責めただろうか。
「ごめんなさいっ。ごめんなさい」
また涙が溢れた。
そしてその涙は、またキツく抱きしめてくれた彼の胸に消えた。
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