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妃殿下を王太后宮に下ろすと御者に命じてすぐさま王太子宮への道を戻る。 いくつか馬車が混む道があったものの、御者が上手くそこを迂回してくれたため、王太子宮にはすぐに到着した。 妃殿下が乗って出た馬車が早々に戻ったことで、ユーリーンが慌ててかけ寄ってきた。 「まぁ!アリシア様だけですの!?どうなさいました?」 妃殿下が乗っていないことを確認した彼女に、私は状況を説明する。 そうしたら、それを近くで聞いていたであろう騎士の男性が1人慌ててこちらに走り寄ってきた。 「おそれながら、そのイヤリングは雫型にダイヤモンドがあしらわれて輪になった、、、そんなものではないでしょうか?」 「はい、それです!まさかどこかでお見かけになりましたか!?」 つい私は身を乗り出して、彼に迫ってしまった。 たしか、ブラッドの同僚の一人で顔には覚えがあった。 「そ、それなら、馬車に乗られた時に落とされたのでしょう。車止めに落ちておりましたので、ターナーが、馬で持って追いかけましたが」 途中で行き合いませんでしたか?おかしいですね?と彼は首を傾げた。 ターナー、、、その名前にも聞き覚えがあった。 その方もたしかブラッドの同僚だ。 「では、イヤリングは王太后宮に届けられているのですね?」 拍子抜けするように呟けば、その騎士は私を安心させるようにニコリと微笑んだ。 「大丈夫です。馬車が行かれてそう時間は経っておりませんでしたので、今頃はもう妃殿下のお手元に届いているかと」 「あぁ良かった!本当にありがとうございました」 途端に一気に身体から力が抜けた。 「お役に立てて良かったです。戻ったらターナーを労っておきましょう」 そう悪戯めいて笑った彼に、もう一度礼を言って、私はまた馬車に戻った。 「護衛をおつけ致しましょうか?」 そう申し出た彼に、私は首を振ってそれを辞した。 騎士や近衛の配置は綿密な計画のもと配されているのを、ブラッドから聞いて知っていた。自分のためだけにその配置を乱すのは申し訳ない。 彼等に見送られ、再び馬車が動き出す。 今度は随分と気楽な気持ちで背もたれに背中を預けることができた。 とりあえず、馬車の進みに焦れながら時間を過ごす必要は無いだけでも十分違う。 良かったわ、、、 そう思って、ふと下を見た時、足元に違和感を感じた。 おやっと首を傾ければ、履いていたヒールの飾りが片方なくなっていた。 まさか、今度は私が落としてきたの!? 慌てて足元を確認するも、その場には落ちていなくて、、、こんな靴で付き添いとは言え、仮にも伯爵夫人が王太后宮を訪れるのは憚られる。とはいえ、既に馬車は王太子宮を出て大通りの流れに乗ってしまっている。 今更また戻るのも御者に申し訳ない。 どうしましょう、、。 そう思って外を見て、ある事を思い出す。 慌てて前窓を開けて御者に声をかける。
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