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第六話 初めて出会った日2〈湊斗〉
事務所の倉庫前。
俺たちはPrologの二人と会うためにそこにいた。
「やべぇ、なんか緊張してきた」
相川が隣でソワソワしながらそう言う。
葉山も緊張していそうだ。
「大丈夫、気楽にしていいわよ」
そんな二人をよそに鈴華さんは家にでも入るかのようなテンション。
まあ、鈴華さんからしてみればPrologの二人は幼馴染みたいなものか。
ーーProlog。
男性アイドルグループで圧倒的な歌唱力とダンスで曲は年間ランキングで一位を取ったこともあるくらいの人気を誇っている。
メンバーの二人はどちらも国宝級イケメンランキングで殿堂入りを果たしているのだが。
どうも本来の性格と真逆というか……。
世間的には将乃さんはチャラ男で達也さんは真面目。将乃さんが達也さんに絡んでいく、みたいな感じなのだがこれがなんとも言えない……。
「将乃ー、達也ー、入るわね」
鈴華さんがドアを開ければ、そこは倉庫と言うには程遠い部屋。
資料などが置いてあるとはいえ、広い和洋室で机と椅子は勿論テレビやベッドまで置いてある。
まるでホテルだ。
そして、俺は元々ここに住んでいた。
将乃さんはコーヒーを啜りながら読書をしており、達也さんはその前でゲームをしながらお菓子をつまんでいる。
相変わらずの二人だ。
「ここは家じゃないんだけどなぁ。将乃はいいとして、達也。アンタまたサボりにきたんですって?」
「知らん」
「サボりにきてたな。子役が気に入らないとかなんとか言って」
「しょうもない」
鈴華さんが額に手をあてる。
将乃さんは俺たちに気づき、立ち上がった。
「湊斗、久しぶりだな。後の二人は初めましてか」
そのまま俺たちの前まで来ると、将乃さんは笑みを浮かべる。
「俺は羽田将乃。よろしく」
「相川晶です!よろしくお願いします!」
「葉山静香です。よ、よろしくお願いします」
「お久しぶりです、将乃さん」
将乃さんは世間的にはチャラ男だが、実際は真面目で面倒見がいい人である。
なぜそうなったかと言えば、ドラマでやった役がハマり役だったらしく、そのキャラのまま来ているらしい。
「将乃さんってテレビと雰囲気違いますね!俺は今の方が好きですよ!」
「こっちが素なんだよ。ありがとな」
相川はさっきまで緊張してたくせに距離感を詰めていく。
将乃さんは振り返って達也さんに声をかけた。
「達也も来い」
「お前らが来い」
達也さんは実際は天上天下唯我独尊、という感じだろうか。
遅刻とドタキャンの常習犯らしく、その度に将乃さんと喧嘩を繰り返している。
「はぁー……。アイツは伊達達也。あんな性格だけど本当に面倒臭いヤツだけど頼りにはなるはずだ」
「ディスってる感が拭えないわね」
将乃さんの紹介に鈴華さんがすかさずツッコミを入れる。
「うるさいな。やるなら鈴華と将乃でやれ。俺はそういうのは受け付けてない」
達也さんはゲーム機から目線を外さずに言う。
昔から変わらないな、達也さん。
中学生の時は高校生と喧嘩して将乃さんに叱られてたし。
怒ったら将乃さんの方が怖いし強いから達也さんも変に逃げられなかったんだろうな。
今もよく叱られてるけど。
「え、達也。今日アンタ機嫌悪くない?どうしたの」
「撮影が上手くいかなくて苛立ってんだよ。癇癪だから一人にしとけばいい」
将乃さんが呆れながら声をかけに行こうとする鈴華さんの肩をつかむ。
やっぱり扱い慣れてるな……。
「いや、いい大人がアレでいいんすか?」
「それが許されるのが伊達達也という人間」
「ええー……」
不満そうに声をあげる相川。
苦笑気味に将乃さんはそんな相川を宥める。
「やる時はやる男だ。スイッチが入ればどうにかなるから許されてるんだよ。相川も頑張ればアイツ越せるぞ」
「つまり、アイツどうにか出来る人間になれってことじゃない。なんでアンタはこの子らに達也押し付けようとしてんの?アイツはペットか」
こうして俺は久しぶりに、相川と葉山は初めてPrologに会ったのだった。
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