月下美人

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「専務・・・田口誠は」 「わしの息子じゃよ」 やっぱり 色んな繋がりを考えて そうあることが 一番自然で納得 「誠の母親は妻と同じ頃に 亡くなったのだよ」 「本当に愛していたのは 誠の母親、律子だったのだけど 妻との結婚も避けることは出来ず 長いこと不憫な思いをさせていた」 「公にはできないから せめて金だけでもと 誠や律子には困らないようにしてきた つもりだが・・・」 「病に侵されてた律子も いよいよという時に 妻が交通事故で重体になったんじゃ」 「本当は律子の側にいたかったのだが」 「わしが弱かったせいで 死に目にはあえなかった」 「誠は認知もしない 母親の死に目にもあわない わしのことを憎んでいたんだと思う」 もしかしたら 認知しなかったのは 律子さんが望んだことだったのかも 勇造さんの奥様に 知られないように 勇造さんのために 影ながら支えてきたんだと思う 同じ女として 気持ちはよくわかる だからこそ ひっそりと一人静かに 亡くなったのだろう そして同時に 奥様も不運が重なり 亡くなってしまったのかもしれない 形だけの婚姻だったとしても 勇造さんなりに 大事にしてきた奥様と 心から愛してきた律子さんを 同時に失って あながち 当時のニュースも 嘘ではなかったのかもしれない 「じゃあ 最初から 犯人は分かっていたの?」 「おそらくは、と」 「じゃあ わたし別にいらないじゃん」 「いやいやいや~」 「千鶴ちゃんが来たことで 誠の行動はおさまったのじゃ」 「なぜ?」 「なぜかは知らんがな」 「もしかしたら今もまだ何か 企んでるかもしれんがな」 「ねぇ」 「勇造さん、もしかして・・・」 悲しそうな目で わたしの次の言葉に肯定していた 「駄目だよ」 「そんなこと考えちゃ」 離れて待機していた内藤も 分かったのか 心配そうに見守っていた 「ははは、大丈夫じゃ」 「まだまだ死にはせんよ」 言葉とはうらはらに どこか 覚悟を決めたような表情が 気になった
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